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世界遺産って?

ユネスコ(UNESCO 国際連合教育科学文化機関)が1972年、第17回ユネスコ総会にて採択した世界遺産条約(正しくは世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)の事。
例えばピラミッドはエジプトの国民だけじゃなく、地球に生きる誰にとっても大切な遺産。それをみんなで守りましょう!という条約だ。

世界遺産の種類

世界遺産にはピラミッドなどの文化遺産とグランド・キャニオンなどの自然遺産、その両方を兼ね備えた複合遺産の3種類があり、今回知床が登録されようとしている自然遺産は登録数も少なく、ハードルが高いとされている。日本では文化遺産が10件、自然遺産は白神山地と屋久島が既に登録済みだ。
2004年7月現在、世界遺産リストに登録された文化遺産は611、自然遺産は154、 複合遺産は23の総計788。これらの世界遺産物件をもつ国は134カ国となっている。



世界遺産登録までのプロセス

 まず、各国の代表が世界遺産に登録したい候補地を推薦し、世界遺産委員会より文化遺産はICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産はIUCN (国際自然保護連合)という国際NGOへ候補地の評価調査を依頼します。
調査結果を基に毎年4月にパリで開かれるビューロー会議で登録の適否が審議され、6月頃に行われる世界遺産会議(2005年は 南アフリカ共和国のダーバンで開催)で決定されます。

世界自然遺産登録の条件とは



自然遺産への条件をクリアした知床

まず条件1については、流氷が運んで来る植物プランクトンを底辺とする海洋生態系が陸上生態系と連続する複合生態系は世界でも稀少でありクライテリアの2に適合する。
 また、絶滅が危惧されているシマフクロウやオオワシ、オジロワシなどが生息している事は4の生命多様性に適合している。

 条件2はどうだろうか。複合生態系を有し、絶滅危惧種が生息するというだけでは条件はクリアされない。それらが類似の世界遺産と比較して優位性、独自性がなくてはいけないのだ。
 類似の世界遺産として上げられているのが、ほぼ同緯度の登録地であるロシアの「シホテアリン山脈」。専門家は植生の違いなどを強調している。

 条件3も、知床は既に国立公園に指定され、独自の保護策も整備されている。

国際自然保護連合(IUCN)の現地調査と要求


レセプションパーティーに参加したIUCNのデビッド・シェパード部長
(右側)写真提供 読売新聞



知床連山最高峰の羅臼岳(1660.2m)山頂にて。「素晴らしい眺めだ」
写真提供 東北海道自然管理事務所



■コメント
写真提供 東北海道自然管理事務所
 2004年8月20日IUCNのデビッド・シェパード部長が知床にやってきた。来るなり関係者を質問責めにするなど、さすがは自然保護の専門家だ。
 前半は悪天候に見舞われたが、3日目からの知床連山縦走中は晴天の知床の山々が歓迎し、「素晴らしい」を連発。5日間の現地調査後に開かれた会見では、知床の美しさを絶賛したが、一方で漁業や観光などとの保護管理の調整が必要だと指摘した。


IUCNからの要求

 帰国後、シェパード紙から届いた書簡には、主に二つの問題点について指摘し、回答を求めるものだった。

1)スケソウダラ漁業規制と海洋保護区の設置

もともと日本には海洋についての保護策はないに等しい。
IUCNが策定する海洋保護区(MPAs)は、海洋生態系の保護や、持続的な漁業の達成を目的とするものだが、我が国はMPAsにのっとった法整備はされていないのが現状だ。
シェパード氏は出身国オーストラリアのグレートバリアリーフなどを例にあげ、海洋保護の必要性などを説明。
知床に海洋保護区を設置し、絶滅が危惧されるトドの餌となるスケソウダラ漁の規制を求めて来た。
実は海洋部分の保護政策は世界的にみても、整備が遅れている。IUCNでは今後の世界遺産リストに海洋を含めた保護・保全活動を促したい考えだ。

2)砂防ダムの撤去

「世界遺産にダムはない」現地調査でそう発言していたシェパード氏。
書簡でも、必要のない箇所の砂防ダムについて将来的に撤廃することを示唆するとともに、サケの自由な行動を妨げないよう魚道を整備する事を強く要求する内容だ。
知床の砂防ダムについては、以前から水産関係者らが調査しており、これを機会に全面的に見直しを─という意見が相次いだ。

IUCNへの回答

 デビット氏への回答については、環境省、林野庁、北海道、地元自治体や漁業者などで協議していたが、結論がでず、10月22日の回答期限に協議が不十分として延期された。
11月5日に提出した回答文は、要求を拒否する苦しい内容となった。
まず、スケソウダラ漁業規制については、漁業を主な産業とする羅臼町側の漁業者などが、既に資源保護の為に独自の規制を行っている事などから、これ以上の規制を望まない事を強調し、海洋保護区域についても、IUCNの策定するそれとは違うが、漁業を行いながら保護を図る「多利用型統合的海域」と位置づけた管理計画を策定する事とした。
 更に砂防ダムの撤去等の問題については、道庁内部では一部の砂防ダムでは、設置された時代と土地利用が大幅に変わっている」「撤去して自然再生を図る必要がある」などの意見もあったが、殆どのダムを管理する林野庁は「全て必要。撤廃した場合、防災上の問題がある」とダム撤去に反対姿勢を示した。結果、撤廃の可能性にはふれず、魚道整備で対応する回答内容となった。

世界遺産に登録されたその後

 世界遺産条約は提携国がリストに記載された遺産を人類全体の普遍的な財産であるという事を認め、保護しようという条約である事は前記の通りだが、実はそれ以上のものは何もない。
 条約には「自国の領域内に存在する遺産を整備、保護、保存する義務であることを認識する」というまわりくどい言い回しで記載してある。
更に「自国にとって適当な場合には、次のことを行うよう努める」という前置きで
・遺産の保護、保存、整備のための機関が存在しない場合には設置すること
・遺産を脅かす危険に対応する実施方法を開発すること。
・遺産の保護、保存、整備のための行政上や財政上の処置をとること
・遺産の保護、保存、整備のための研修センターの設置、学術的調査を奨励すること
などが記載されている。

知床の世界遺産推薦までの経緯

平成15年5月26日
世界自然遺産候補地に関する検討会(東京)にて知床、小笠原諸島、
琉球諸島の3地域を選定
10月16日
環境省と林野庁は来年2月1日までに推薦書提出を目指す地域として
「知床」を選定
10月27日
第1回知床世界遺産候補地地域連絡会議(斜里町)
管理計画(素案)の検討
11月5日
第2回知床世界遺産候補地地域連絡会議(羅臼町)
管理計画(案)の検討
11月7日
管理計画(案)に関する一般からの意見募集開始
11月12日
地元説明会(斜里町)
11月13日
地元説明会(羅臼町)
11月27日
意見募集〆切 意見提出件数52件 意見総数303件
12月5日
第3回知床世界遺産候補地地域連絡会議(斜里町)
管理計画(案)の修正
12月15日
第4回知床世界遺産候補地地域連絡会議(羅臼町)
管理計画(案)のとりまとめ
平成16年1月
環境省、林野庁、文化庁及び北海道による管理計画の決定
1月16日
世界遺産条約関係省庁連絡会議において推薦書提出(管理計画書添付)
7月20日〜26日
世界遺産委員会の顧問機関(IUCN)による現地調査
17年4月
パリ・ビューロ会議で適否を審議
7月14日
第29回世界遺産委員会(年次会合)において知床の登録が決定

関連リンク・参考サイト

社団法人日本ユネスコ協会連盟
世界遺産活動についての詳細など
ユネスコ本部(English)
各会議の議事録なども見る事ができる
環境省東北海道地区自然保護事務所
管理計画書、地域連絡会議の資料などがダウンロードできます
世界遺産資料館
世界遺産について詳しく紹介しています
YomiuriOnline知床特派員
読売新聞の知床情報サイト 知床関係記事データベース他
大いなる知床(シリエトク)
北海道新聞の知床情報サイト 写真ギャラリー、知床関係記事など

参考文献

IUCNデビッドシェパード氏からの書簡(抄訳)

IUCNからの書簡に対する回答(PDF30.2KB)

世界遺産条例全文